大工さんの日常

今時手間受け大工の仕事、無駄?知識、愚痴なんかをちびちび書き綴ります。

サシガネのおはなし

今日は快晴でした、昨日の暴風とはうってかわっていいお天気、外部もサッシ残しで終えたので次の上棟までにサッシと一階野縁が終わればとりあえずバトンタッチできそう。

また次も発電機現場だってさ‥。東電‥。

さて、サシガネのおはなし。正式名称は曲尺になるんでしょうかね?うちの親方は「曲がり」だの「矩」だの呼んでました、完全にローカル名称。

そもそも差金は聖徳太子が16歳のとき‥(以下略)気になった人は調べてみてね!

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一くくりに差し金と言っても種類がありますね。表裏のやつ、両表のやつ、寸目とセンチのやつ、尺までしかないやつ、五寸しかないやつ‥。

メーカーにしても色もまちまち、基本はシルバー、変わり種の金、白、持ってないところで黒とか黄色(センチだけかも)畜光もあるそうです。黒は一回使ってみたいけど、聞いたことあるだけで見たことありません、ホームセンターにはもちろん、馴染みの金物屋にも置いてませんでした。

わざわざ注文するほどでもないけど、見つけたら買ってみたい一品です。

先日、プロショップでシンワさんの営業が売ってた白い差し金。

「昔より塗装が長持ちしますよ!」

「昔より?結局塗装は剥げること前提でしょうか?」

「う~、そうですねぇ‥で、でも持ちはイイしほら、見やすいし!」

「これの平ぴた(差し金の商品名)タイプがあったら買ってみてもいいかな~?」

「いや~ないんですよ~‥」

冷やかしただけでは可哀想なので試しに一本購入、確かに見易い、人と被らないから一目瞭然、しかし「いつかは」塗装が剥げる事前提だとするとちょっとリスキーですねぇ。

悪口になっちゃうけど、タジマの「金の矩(商品名)」ありゃーダメだ、ちょっと曲げただけでメッキがボロボロ剥げる。

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握りポジションの8寸のあたりは完全に普通の差し金、こりゃ失敗かな?他の人と区別するためだけに買った はいいけど、これは二軍落ち。

普段使わない、というかほぼプレカット仕様なので使う機会がない裏目付きだから正直使いこなせてないです(^^;

一番のお気に入りはシンワの「平ぴた」固いけど適度にしなるし、メッキみたいにテカテカ光らないから見易い。

だいたい現場に常時5本ですかね、差し金。

長いの、というか定寸の尺6が3本、尺のちょい短いのが2本、腰袋に差してる5寸が1本。

親方が差し金大好きで、現場に10本はありました。引っかかるという理由から腰袋は下げない、スケールも持たない、その変わりあっちこっちに道具がある。

入りたての頃私はまさに「動く腰袋」後ろにくっついて歩いて親方が手を出したらスケールを出す、玄翁を出す、ビスを出す、メモを取る。

一時期弟弟子が入りました、一年持たずに辞めちゃいましたがやはり動く腰袋2号、怒られてるのを見てると「俺もこうだったんだな」とか思ってました。


皆さん、現場に、とはいうより差し金何本常備してます?私の親方は車にも常に新品が5~6本入っていた気がします。


まだ親方が親方元に奉公で上がった頃、大工はもちろん何もかもを刻む時代。朝から夕方まで仕事して、夜は夜で墨付け、刻み、親方の世話になった工務店は当時隆盛を極めていたらしく、100人くらい大工がいたそうです(ホントかよ‥)

中学卒業してすぐに籍まで移された親方、週ごと違う親方の現場で仕事していたそうです。ある日の朝、一人の親方が訪ねて来たそうです。

「いや~参ったよ、差し金加工場に置いてきちゃったから取りに行くしかないよ~」

「俺の使ってください、まだロクに使えないから」

「じゃ、お言葉に甘えて‥」

その日は親方の差し金を持っていってつかってくれたそうです。

また次の日‥。

「また忘れちゃった、今日は他にも材料取りに行く都合があるからちょっと加工場戻るわ」

‥その親方、加工場に向かう途中で居眠り運転のトラックに正面衝突されて、積み荷の鉄筋がガラスを突き破って体を貫いて亡くなったそうです。

そんな経験があったからか、車での日中移動を嫌う人でした。何か忘れた、買いにいかなくちゃ、という時絶対に外には行かせませんでした。

気持ちが焦れば焦っただけ注意が散漫になる、忘れたなら明日忘れなければいい、ただ、忘れないように段取りが出来れば尚いい。

お昼の弁当買いに行くのも億劫がって出ないのは、こんな話を聞いてたからかもしれませんね。